支柱立て完了。風と暑さとの戦いの10月

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風に逆らいながら、最後の一本を

10月に入っても、海の上はまるで真夏のような暑さです。
日差しが照りつけ、海面からの照り返しもあって、船の上では40℃を超える。
朝早くから作業を始めても、すぐに汗が流れ出します。

今年の支柱立ては、風との戦いでもありました。
親父さんが船を操縦し、熊さんが一本一本、支柱を海底に押し込んでいきます。
潮の流れと風の向きを見ながら、角度を調整し、力を込めて「ぐっ」と押す。
波が少しでも高くなれば、船が揺れてバランスを取るのも一苦労です。

ある日、風が急に強くなり、現場まで行ったものの作業を断念したことがありました。
「今日は無理やな」
親父さんが舵を切り返すと、熊さんは黙って頷きます。
悔しいけれど、自然には逆らえません。
それでも何度も海に出て、ようやく最後の支柱を立て終えたとき、
胸の奥から「終わったなぁ」と息がこぼれました。

親父さんの一言に重みがある

帰りの船で、親父さんがぽつりとつぶやきました。
「昔は10月にこんな暑さなかったぞ」
熊さんは笑いながら「ほんとにね」と返します。
お互いに汗だくで、顔を見合わせる余裕もないけれど、
その一言に、長年この海と向き合ってきた親父さんの重みを感じました。

風や潮の変化、気温の違い――
親父さんは、言葉には出さなくても全部覚えています。
熊さんも少しずつ、それを体で覚えていく。
作業を終えて、無言のまましばらく潮風に当たっている時間が、
なんだか心地よく感じられました。

海はまだ夏、陸はもう秋

陸では稲刈りが始まり、トンボが飛び交い、空は高く澄んでいます。
けれど、海の上はまだ真夏。
風は熱く、波のきらめきも強いままです。

それでも、ふと潮の香りの中に、秋の匂いを感じる瞬間があります。
それは、季節が少しずつ動いている証拠。
海の上に立てた支柱を見渡すと、
「これでようやく次の準備に進めるな」と、心の中でつぶやきました。

今年の暑さは本当にきつかったけれど、
親父さんと二人でやり遂げた支柱立て。
風にも負けず、暑さにも負けず、無事に終えられたことが何よりの喜びです。
海の上に並ぶ支柱を見ていると、少しだけ風が優しくなったような気がしました。

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