昔の海を取り戻したい 有明海でシュロ立てをしてきました

有明海の干潟で行われたシュロ立て作業の様子 ブログの投稿

海苔のシーズンが終わると、漁師は少しゆっくりしていると思われることがあります。

ですが実際はそんなことはなく、来シーズンの準備や船の整備、組合の仕事などが続いています。

先日は組合の仕事で「シュロ立て」をしてきました。

普段は海苔の仕事をしている私ですが、この作業も有明海を守るための大切な取り組みの一つです。

今回は、そのシュロ立ての様子を書いてみようと思います。

シュロと聞いても、あまり聞き慣れない方が多いかもしれません。

今回使ったのは、竹にシュロの繊維を取り付けたものです。

フサフサした茶色い繊維が特徴で、見た目は小さなほうきのようにも見えます。

組合からは一軒につき250本配られました。

それぞれの家でシュロの繊維を取り付ける作業を行い、準備が終わったら海へ持っていきます。

私たちの組合は36軒ありますので、

250本 × 36軒 = 9,000本

ものシュロを40人で有明海へ設置することになります。

数字で見ると、その数の多さに驚きます。

作業当日は干潮に合わせて出港しました。

向かう場所は、私たちが普段海苔の仕事をしている場所よりも少し岸寄りの干潟です。

組合では事前に調査を行い、その年に適した場所を決めています。

今回も調査の結果、例年より少し岸寄りの場所になりました。

陸からの距離はおよそ3キロほど。

干潮になると広大な干潟が現れます。

初めて見る人は、その広さに驚くと思います。

数時間後には海の中になるとは思えないほどの景色です。

有明海の大きな干満差ならではの光景ですね。

作業が始まると、私たち若い組合員がシュロを持って干潟へ降ります。

そして一本ずつ手で泥の中へ差し込んでいきます。

柔らかい場所なら手で簡単に入りますが、場所によっては砂の層があってなかなか入りません。

そんな時はトンカチを使い、上から叩いて打ち込みます。

作業そのものは単純ですが、本数が多いためなかなか大変です。

親父たちベテラン組は、私たちが立てたシュロを確認しながら回っていました。

立て方が甘い場所はトンカチでさらに打ち込み、しっかり固定していきます。

若い人が立てて、ベテランが確認する。

そんな役割分担で作業は進んでいきました。

この日の作業で一番大変だったのは暑さでした。

持って行った温度計を見ると、なんと40度。

船の上も暑いですが、干潟には日陰がありません。

上から太陽が照りつけ、下からは泥の照り返しがあります。

シュロを抱えながら歩くだけでも汗が止まりません。

作業時間はおよそ2時間ほどでしたが、それ以上に長く感じました。

毎年暑くなっている気がしますが、今年もなかなか厳しい暑さでした。

熱中症にならないよう、水分補給をしながらの作業です。

作業の途中、ふと昔のことを思い出しました。

子どもの頃、この辺りの干潟にはアサリがたくさんいました。

少し掘るだけで見つかり、バケツいっぱいになることも珍しくありませんでした。

ところが今回は試しに掘ってみても、アサリの姿は見つかりません。

地元で「ミロッゲ」と呼ばれているアサリによく似た二枚貝も、最近はほとんど見かけなくなりました。

昔の海を知っているだけに、少し寂しい気持ちになります。

あれだけたくさんいた貝が、今では簡単には見つからなくなってしまったのです。

シュロ立ては、そんな海を少しでも元気にするための取り組みです。

貝の赤ちゃんは海の中を漂っています。

そしてシュロのフサフサした繊維に付着し、そこで成長していきます。

貝が増えることで海の環境改善につながることも期待されています。

最近の有明海では赤潮が発生し、海苔の色落ち被害が問題になっています。

私たち海苔漁師にとっても深刻な問題です。

もちろんシュロを立てたからといって、すぐに海が元通りになるわけではありません。

それでも何もしなければ変わりません。

もっと別の取り組みも必要なのかもしれませんが、まずはできることを少しずつ続けていくしかないのだと思います。

地道な作業ですが、未来の海のために必要な仕事だと感じています。

実は今回の作業には後日談があります。

作業中、シュロを抱えて干潟を歩いている時に少し腰に違和感がありました。

その時は気のせいだろうと思っていたのですが、家に帰るとだんだん痛くなってきました。

翌日には起き上がるのも一苦労です。

どうやら人生初のぎっくり腰のような状態になってしまいました。

結局、2日ほど安静にすることになりました。

最近はストレッチも始めています。

海のために頑張った結果、先に悲鳴を上げたのは有明海ではなくクマさんの腰でした。

来年は海も元気になり、クマさんの腰も元気な状態でシュロ立てができればいいなと思います。

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